家内は一日の大半、特に午後からは眠り続けています。ホスピスのペインコントロールが効いているからです。今までは痛みが始まるたびに麻薬系薬剤フェンタニルを舌下で入れました。これによって痛みは速やかに止まりますが切れてくると痛みが始まります。薬の有無により痛みの振幅が大きいのです。しかし今はフェンタニルのパッチを皮膚に貼り付けています。これだと24時間薬剤の体内濃度を一定の域値を保つことが出来るため痛みの幅をおさえることが出来ます。効能が途切れなく続くからです。それでも効かない時は希釈したフェンタニルを飲みます。また息が苦しい時はセパドンとデパスという緩和剤を飲みます。これらを服用することで痛みを忘れることができます。ここにホスピスの真骨頂があります。痛みのコントロールは名人芸だと思います。
一つだけ難点があるとすればそれは眠りに落ちるためなかなか会話が出来ないことです。私は病室で彼女と話すことが何より楽しみです。彼女と話すと不思議に元気になるからです。話を交わしているというより彼女の人格と新しく出会っているという感じです。変な話ですが自分の妻が世の中のどんな人よりもとても新鮮です。
だからこそこの交わりをとられるのはつらいところです。
不快感やダルさ、息苦しさへの対応は眠りに逃げることだけなので覚醒しながらしんどさのみを取ることはできません。彼女が目をさましているときは痛い時です。会話しているときは楽しみながらも痛みを堪えているときです。まず30分が限界だと思います。
彼女のコンディションは午前中ほど調子がいいです。午後から夕方になるにつれて体調は落ちていきます。大量の汗でシャツの下に入れているタオルはグッショリ濡れていますので頻繁に交換します。薬を入れる間隔も短めになります。彼女が一番弱る時、本人がして欲しいことをしてやりたいです。呼べば直ぐにかたわらに行き阿吽の呼吸で世話をしたいです。なぜならこれは今しか出来ないことだからです。今そうしなければきっと後悔するような気がします。出来れば夜は見守ってあげたいしそれが彼女も望んでいることに違いありません。
ところが…。
病室に入ってしばらくすると彼女は目を覚ましました。そして眠り続ける今の状態を心から感謝できると話を切り出しました。
「自分が眠り続けている間は誰がそばに付いていてくれているのかわからないわ。たといあなたがそばに居てもわからない。そんな状態に主が持っていってくださったのはあなたが私から離れて心おきなく主の働きに向かって行けるためだと思います。だから他集会の特伝やユースセミナーに行ってきてください。あなたが働きに行ってる間中私は眠りに落ちます。あなたは私を気にしないで準備に取りかかってね」
私は今まで自分が彼女を捧げて仕えている気でいました。彼女と共にいる時間と引き換えに赴くからです。しかし本当は彼女が病床から私を主に捧げているのだと思いました。自分自身を主に捧げるとはどういう意味か新しく教えられました。それは自分自身が宝のように大事にしているものを捧げることなんだと。
ホスピスに行き前に大阪ガン免疫化学センターに行きました。次の土曜日が待ちきれない私は少しでも早く活性リンパ球を用意出来ないか尋ねました。彼女の衰弱の仕方があまりに早く思えて不安になったのです。センターによると前倒しは可能です。ただしその場合リンパ球の数はかなり少なめになります。たった1日違うだけで増殖数がまるで変わってくるというのです。やはり予定通り19日まで待つことにしました。私は3回目のリンパ球材料を入れる採血キットを受け取りその足でYホスピスに向かい採血を依頼しました。快く引き受けてくれました。感謝。
別れ際に、主よ。どうぞ彼女を支え恵み痛みを取り去り良くしてやって下さい!と祈りました。すると「とっくに主に良くしていただいているわよ」と笑いました。寝ている彼女はぐったりして苦しんでいるように見えてしまいます。ところがそうではないそうです。眠っている間とてもリアルな生々しい夢を繰り返しよく見るというのです。それは元気になった夢です。それはそれは嬉しい楽しい夢だそうです。その夢が覚めたあとガッカリしないで微笑んでいることにキリスト者の持つ約束の凄さを思いました。彼女は全能の主なる神様をアバ父として期待を持って信頼しています。また結果がどうであれ主の約束を信じて委ねています。キリスト者であるなら誰もが夢で終わらない夢のような約束を与えられています。復活です。凄い約束です。
それはそうとしてどうぞ19日の治療が用いられますようにお祈りください。
また娘のクラスが新型インフルエンザで学級閉鎖になりました。本人は熱があります。頭が痛いと言って寝ています。大事をとって今日は集会を休ませました。主の守りがありますようにお祈りください。
Filed under: report on 9月 17th, 2009 | コメントは受け付けていません。
朝7時半に延々と鳴り続ける電話がありました。何事かと受話器を取ると家内です。みんな起きる時間なのに寝坊しているような気がして掛けてみたというのですがはたしてその通りでした。これで全員遅刻を免れました。ホスピス住まいが長引いていますが母親の勘は鈍ってはいません。
私に対しては開口一番「メッセージ準備出来たの?」と尋ねました。実はまだです。
「あなたお願いだから今日は一切家事や雑用、私の介護を切ってください。そしてメッセージの準備に専念してください。そうでないと私はストレスが溜まりますからお願い!」でもまず大阪ガン免疫化学センターとYホスピスに交渉しないといけないよ。「そんなことは明日でも出来るけど今日のラジオ収録のためには今しか時が無いでしょう?あなたは伝道者ですよ。あなたが主の前に出るはずの時間を私たちのことで使わせなくないの。私の免疫力を上げたいんなら主からメッセージを聴くことだけに専念して!」
命令半分哀願半分のことばを聞きつつ彼女の望むことをしようと考えました。書斎に籠り呼び鈴が鳴っても無視!家事はシャットアウト、朝は断食して祈りながらメッセージの準備に取り掛かりました。その途端に最近読書量が極端に減った事を思い知りました。何しろ大好きな新聞まで読めていないのです。今の私の生活は彼女の介護を中心に回っているからです。主がそのように導いてくださったのです。
メッセージのないメッセンジャーほど惨めな人はいません。主は荒野で主に叫ぶ者の声に答えてくださいました。締め切り時間ギリギリの3時半までに二回分のメッセージが与えられました。感謝。
兄弟姉妹に嬉しいご報告を致します。19日の免疫細胞療法はYホスピスで受けることが出来ます。また3回目以降の採血もYホスピスでしていただけることになりました。
ただ日曜日の礼拝出席については注意が必要ですと強いアドバイスを受けました。医学的には控えるべき所です。危険をおかすことですと。
今の彼女は寝返りだけで嘔吐反応が出ます。現在の体調のままでもしどうしても礼拝に出られるならばストレッチャー掲載の寝台車が必要ではありませんか、と提案がありました。しかしたとい寝台車で集会所まで行けたとしても寝たまま二階に上げることはできません。その場合は一階のどこかでモニター中継の礼拝になります。しかし全ては19日の治療次第だと思います。そこで元気になればまたパンさき集会に行けるでしょう。大事な決断は体調不良時には避けるのが定石です。今決めなくてよいなら様子を見よう、そして結果は主に委ねようと思います。全ては19日の治療結果次第です。
病室に入るとき彼女は眠っていました。最近は息が苦しいので緩和の薬を入れました。これを服用すると眠くなります。しかし私の気配に目を覚ましました。これは彼女の特技です。元気な頃彼女は夜中の2時だろうが4時だろうが私が帰ると瞬時に起き上がって迎えてくれたものです。
今は起き上がることはできませんが不安一杯の面持ちで私に尋ねました。「メッセージ取りつげた?」うん、二回語らせていただいたよ。「良かった!安心した!ほっとした!」そんなに気になってたんか?「そらそうよ!やっぱり高原兄は福音を語らないとダメ。神様が福音のために立ててくださった人なんやから。」でも余裕なんてなかったよ。ギリギリだったけどな。「そこにあなたらしさがあると思います。切羽詰まった土壇場で最後は主に強められるて乗り越えて来たものね。」私の目の前にいるのはただのガン患者ではありませんでした。どこまでもキリスト伝道者の妻で今はたまたま癌で伏せている人です。真っ直ぐ。直球。剣法で言うならじげん流か。我が同志。我が戦友。私がキリストの次に愛する人だ。彼女の顔色は日に日に益々黄色に染まっていましたが私には眩しくてなりませんでした。願わくば神様が彼女を使って生ぬるい私をもっともっと恥じ入らせて下さいますように。私が彼女の献身にふさわしくありますように。
ストレッチャーの寝台車についてはあまりにたいそうだと否定的です。寝台車を頼まなくてもよいように起き上がる練習を挑戦してみるというので、頼むからええ加減勘弁してくれ!みんな祈ってくださっているのに無茶苦茶したら不真面目やろっ、と諌めました。
私たちはずっとこの調子できました。癌であること以外何も変わっていません。一つ変わったことがあるとするならば一層絆が強くされたことです。主が一本に結んだ二本の紐を引き離そうとして引っ張れば引っ張るほど結び目は益々堅くなります。この病は私たちを引き裂く力のように見えながら却って強く深く結びあわせる事になりました。結局私たちは害を受けているのではなく恵みを受けているのです。神様の知恵の深さ、恵みの大きさ、あわれみの豊かさはなんと偉大な事でしょう。どうか私たち家族が間違っても主を見損なうことがありませんように。
今日は次男がホスピスに泊まります。一人彼女のそばに着いてると思うだけですごく安心です。帰りがけ彼女におやすみのキスをしました。「ヒュー、ヒュー!」次男のすっとんきょうな声がホスピスに響き渡りました。
Filed under: report on 9月 16th, 2009 | コメントは受け付けていません。
栄光在主。3時くらいにホスピスに行きました。
家内は紙おむつをはずした代わりにチューブを付けて排泄しています。というのは紙おむつの交換で身体の向きを変えると嘔吐反応が始まること、また尿パックに溜まったもので一日の尿の量を知るためです。彼女は一段と黄色い肌になり、また痩せました。午後からは話すことが余りできません。
この3日間お通じがないので腸の運動を助ける薬を入れる予定です。首から上に汗が吹き出します。また肩凝りがあります。自律神経の失調状態です。
そういうわけで是非ともお祈りいただきたい事があります。
今の彼女の体力では19日車で移動するだけでも大変な消耗になります。
出来れば
1.大阪ガン免疫化学センターで培養した活性リンパ球をYホスピスで輸血したい。
2.Yホスピスで採取した血液を大阪ガン免疫化学センターに持ち込んで3回目の分の材料にしたいのです。そのための交渉を明日します。
どうぞ道が開かれますようにお祈りください。私たちは今日はただ見つめながら沈黙の時間を過ごしました。夜はわずかの言葉を出す体力がありませんでした。ただ一回だけ声に出して私に尋ねました。「メッセージの準備できたの?」明日はラジオ収録するつもりです。お祈りください。
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昨晩集会の姉妹方がお見舞いに来てくださいました。一人一人と親密な言葉を交わしあっているのを見ながらこれが一番彼女らしい姿だなぁと思いました。静かで優しくて温かいキリストにある交わりを見守りながら何となく主の視線を思いました。主は兄弟姉妹が一つ交わりになっている姿をこの上もなく喜んでおられるに違いないと。ひとは兄弟姉妹の交わりによって兄弟姉妹らしくされて行くのですね。
昨晩彼女は良く眠れました。朝電話で子どもたちの事を色々相談しあいました。たとい離れていても、また病の中にあっても一つのチームとして偉大なプロジェクトに取り組んでいるのだと思えました。そうすると病のあるなしはあまり大した問題ではないとも考えました。
昨日アロマテラピーのためにシャツをたくしあげました。すると顔や眼だけではなく身体全体が黄ばんだ色です。ドクターは黄疸ではないとおっしゃるのですがではなんなのだろう。私はどうも気になると彼女に言いました。すると「余命1週間と言われたのに主がちゃんとこうして生かしてくださっているのだから身体の色くらいはいいんじゃないかしら?癌じゃないのに急に体色変化したなら大騒ぎすべきかもしれないけど、私はこの数日食べていないし病気は病気なんだからこれくらいの変化がでても不思議じゃないとおもうわ。でも麦茶が美味しい、尿もでる、痛みのコントロールもできつつある、夜はナースの手厚い看護で眠ることができる、レンタルエアーマットも気持ち良く使えているわ。健康な人と同じじゃないことで心配し過ぎなくてもいいとおもうわ。なるほど。元気が出てきました。
よく人と比較するな、とメッセージをします。比較すると優劣の見方に支配されるからです。人が高ぶるのも自己卑下して落ち込むのも人と比べるからです。そんなことを今まで人に語っておきながら私自身が彼女を健康な人と比べて一喜一憂、うろたえていたのです。彼女は彼女なんだ。彼女のいのちを生かしておられる方は思慮深くもあわれみ豊かな主なる神様なんだからこの方に目を向けていれば良い。今までずっと私の羊飼いであられた主に従って19日を目指していけばよいのだと気づきました。感謝。
明日昼過ぎにラジオ収録出来るように努力します。お祈りくださいますなら感謝です。
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